私の実体験宝塚

元タカラジェンヌが教える「好感度の高い話し方」②『軽やかに』

前回は会話に入る前の導入部分の重要性についてお話をしました。

まだご覧になっていない方はこちらからどうぞ。

軽やかに

今日は続いて2つ目のポイントの「軽やかに」についてです。

この軽やかにして欲しいポイントはいくつかあります。

会話を苦手とする人の多くはなんとか無言にならないように無理やり話しを続けようとしたり、失礼がないように言葉遣いを気にしがちです。

相手へ配慮をすることはとても素晴らしいですが、結果そこに意識を囚われすぎて自分で何を言っているのかわからなくなってしまったり、相手も結局何を言いたいのか理解できないという誰もハッピーではない結果を産むことになってしまいます。

前回も言いましたが、好感度の高い会話というのは話している間や話終わった後になんだか「気持ちがよかった」「楽しかった」「話しやすかった」という感情の部分が非常に大きく影響しています。あなたが一生懸命話せば話すほど相手にも緊張は伝わり、何を伝えたいのかもわからずに相手は気持ちの良さを感じることが出来ないのです。むしろ相手も疲れてしまい、最後まで話を聞く前に帰りたいとまで感じてしまうかもしれません。

大事なことは相手に気持ちよくなってもらうことです。中には話すのが好きで一方的に話して自分だけ気持ちよくなっている人もいますが、相手からしてみればいい迷惑でちっとも気持ちよくはなく、むしろ不愉快な気分になってしまいます。

話すのが好きなのと会話力がある人はイコールではないというのはこういうことだからです。

一番の目的は相手にストレスを感じさせずに楽しい時間を過ごして気持ちよくなってもらうことですので、難しい言葉を使う必要はないのです。

軽やかに伝えるー飴ちゃんタイムを与えないー

特にビジネスシーンの場合や営業職の場合、説得力を持たせる為や知識や自信があることを見せるために専門用語を頻繁に使う人がいます。しかし相手がプロではない場合、それは全くの逆効果なのです。専門用語を言われた時点で「それってどんな意味なのだろう」と相手は考えてしまい、そこからあなたの話への興味が薄れたり、違うことを考え始めてしまうのです。会話を一人で回し相手を置いてけぼりにしてはいけないのです。相手を巻き込み、楽しんでもらわないと会話は成立しないのです。

宝塚の時も「お客様に飴ちゃんタイムを与えないように」と演出家の先生から指導されたことがあります。

これはどういうことかと言うと、舞台で演じる際に集中した演技をしないと見ているお客様は退屈して飴を取り出して舐め始めるということです。

特に舞台というのは出演者同士で演じているものをお客様に見ていただくものです。お客さまはその世界観に引き込まれ、まるでそこに参加しているような感覚になるから夢中で楽しい時間を過ごすことができるのです。みなさんその体験をしたくて観にいらしているのです。

ですのでそこで一瞬で覚めさせてしまうような行為は相手を置いてけぼりにして退屈させてしまうことになるのです。ですので小難しい言葉よりもより分かりやすく簡潔明瞭な言葉を使う方が相手の理解が早くなり、ストレスにもならないのです。このように『軽やかに伝えること』が非常に大切なのです。

さらにいうともしあなたがオススメしたいものがあったり会話を盛り上げたいのなら、具体的な自分の感想や同じようなケースの第3者の話を織り込むと尚良いです。なぜならそれを聞いた相手は実際に自分が使ったり経験した時のイメージをしやすく、さらに興味を示してくれるからです。

この会話には簡単にイメージをしてもらうことで興味をもってもらいやすくなるのと同時に、「他にも同じような人がいる」「目の前の人も同じだ」という安心感を持ってもらえる効果があるのです。特に日本人の傾向ですが、松竹梅なら竹、一番人気と書いてあるのなら一番のものを選ぶ傾向にあります。というのは「みんな一緒だから安心」という思考がとても強いからです。

誰しも不安が残るものに手を出すことは躊躇をします。ですがみんなが選ぶものに安心を感じる人はとても多いので分かりやすい例、そして目の前の人や他の人も経験したと聞けばより具体的な意見として受け入れ強く安心するのです。

軽やかに反応するー聞くではなく聴くー

また相手を置いてけぼりにしないようにする為には相手の話を聞くのではなく、聴くことです。あなたは「聞く」と「聴く」の意味の違いをご存知でしょうか。

聞くとは「自然と耳に入ってくること」で、聴くとは「相手の話の内容に意識を傾けること」です。

相手が話す内容には相手の興味や関心ごとが詰まっています。何かを話題にしようとか話のネタを事前に用意しようとする人がいますが、そんな苦労をせずとも相手の興味や関心をひくには相手の話に熱心に耳を傾ければ良いのです。相手の会話のそこかしこに話のネタが散らばっているのです。その為には相手にどんどん話をしてもらう必要があります。その為にこちらがすることは『軽やかに反応すること』です。

「話すより聞く側に徹しましょう」と会話力や話し方の本でもよく書いてありますよね。あなたはその時にしっかりと相手の話にリアクションをとっていますでしょうか。簡単な単調な相槌ばかりしていませんか?

それでは相手は「あなたがちゃんと聞いてないな」と感じたり、「自分の話ばかりだな」と早く切り上げようとすらしてしまうもしれません。自分が関心があるワードが出たら会話を広げても構いませんが、広げた風呂敷をきちんと畳める自信がないのならそれはやめた方がよく、時間を無駄にすることになってしまいます。

単にうなづいたり相槌するだけでなく相手を褒めたり、共感したり、深く知るための質問を合間にしてみてください。「さすがです!」「知らなかった〜」「すごい!」などの相槌の「サシスセソ」の連呼はもう古いですし、それをやっているのは相手にもバレます。それよりも深く「あなたの話に興味があります」と相手に感じてもらうために、具体的に相手を褒め、さらに深く教えてもらう姿勢を見せることが大切なのです。そのためにも聞くのではなく聴くことが大切なのです。

そうすれば相手はその会話を自分でどんどん広げて話してくれます。人は自分の話を聞いてくれた人に好感を持つと言われています。そうやってどんどん話してもらって相手に気持ちよくなってもらうのです。しかし完全に聞き役に回られてしまうのも意外と人は気を使うものです。相槌をして褒める、質問をすること、それに自分のことをさらっと加えると相手は自分だけ一方的に話しているとは思わずに、思う存分あなたに話してあげようと気持ちよくなってくれるのです。

例えば「そうなんですね(相槌)〇〇までされていて(具体的なポイント)意識が高いのですね(褒める)私も興味があったんです(共感)!でも周りに詳しい人がいなくて(自分のこと)何かきっかけはあったのですか?(質問)」といった具合です。

相手を褒めることは自分が話す時に織り交ぜるのもとても良いです。例えば何かを説明したり紹介した時は「ここまでで何かご不明点はございませんか」「ご質問ございませんか」などと聞くと思います、そうした時に相手が「ない」と答えた時はすかさず「理解が早いですね」「仕事ができる人はさすがですね」「頭が良いですね」と軽やかに反応して伝えましょう。そう言われた相手は嫌な気はせずに気持ちが良くなってくれると思います。さらにいうとその時の声のトーンは話していた時よりもトーンを落としてさらっと伝えるようにすると相手の胸に強く響くのでとてもオススメです。

軽やかに名前を呼ぶー特別感や親近感ー

好感度の高い会話を成立させるためには、特別感や親近感を感じてもらうこともとても大切です。しかしあまりに距離感が近いのも馴れ馴れしいと感じさせてしまうので、今から言うことを加えるだけでイメージがアップします。それは相手の名前を会話の中に織り込むことです。

目の前にいる相手だからと直接名前を呼ぶことはなかなかしないと思います。ですが、そんな時に自分の名前を呼んでもらうと少しドキっとして名前をきちんと覚えてくれていたと思い、相手は「丁寧に扱われている」と感じるのです。これは前回お話した「相手の承認欲求を満たすこと」にもつながります。

この「名前を呼ぶこと」は色んな場面でも織り交ぜることができます。

朝の挨拶でも、ただ端に「おはよう」と声をかけるのではなく、その人の顔を見て「〇〇さん、おはよう」と言うだけで相手はあなたとの距離をグッと近く感じ、とても気分良く感じるものなのです。

このように名前を呼ばれることでそれが特別だと感じ、相手にはあなたの印象がより強く残るのです。聞き馴染んだ自分の名前を呼ばれることを不快に感じる方は少ないでしょうし名前を覚えてもらうことで親近感も抱くようになるのです。

ですので『軽やかに名前を呼ぶこと』はこちらの好感度を高めて相手の気分を良くすることに非常に有効なのです。

軽やかに話すー歌うように話すー

相手と話す時には、相手が聞き取りやすい声量や滑舌に気をつけましょうと沢山の本に書いてあったりスクールなどでも言われると思います。もちろんそれも大事ですが、もっと大事な点があります。

それは相手の耳にスッと入る流れを作ることだと思います。

宝塚では「セリフは歌うように、歌詞は語るように」と教え込まれてきました。耳にスッと入ってくるものは心にダイレクトに響きます。ですので難しい言葉ではなく理解しやすい言葉にすることもとても大切なのです。

初めて私のカウンセリング中の会話を聞いたクリニックの後輩が、私が歌っているのかと思ったと言ってきたくらいです(笑)流れるような言葉は相手の耳にストレスを与えませんし、時間が長いと感じさせにくいと思います。しかしいつまでもそれが単調なリズムでは次第に聞き流されて相手は飽きてしまいます。

そこで相手に印象付ける為に必要なのが「抑揚」と会話の「間(ま)」です。

あなたは自分の会話を録音して聞いたことはありますか?割とみなさん同じようなリズムで話すことがほとんどです、その癖に慣れてしまい、どこでもいつも同じようなリズムで会話をする人がほとんどです。そうするとさっき言ったように相手は飽きてしまい、飴ちゃんタイムに入ってしまうのです。

イメージしてみてください、相手がお経のように話をしてきたらあなたの瞼はだんだんと重くなってくると思います。

ささっと伝えるところは早めに、重要な点や分かりにくいところはゆっくりと抑揚をつけて声のボリュームを少し大きくして伝える。これだけで話の流れにメリハリがつき、相手により分かりやすく情報を伝えることができるのです。自分で声のテンポ、大きさ、トーンを変えて歌うように会話の流れを作るのです。

そして大切な点や伝えたいところの前に一拍間(ま)をおくことで今から自分の言うことに相手を惹きつけることができ、より強く印象付けることができます。このように『軽やかに話すこと』が大事なのです。

沈黙が怖くて焦って何か話そうとしたりする人も多いと思います。このようにうまく間(ま)を使うことで相手の理解を高めることもできますし、慣れてくれば何か伝え忘れたことがあればその間に思い出せたり自分で確認しながら話すこともできるのです。

自分で聞いてみる

熱意を伝えたくて何度も同じことを言ったり、顔を真っ赤にして興奮して早口だったり大きな声で長々と話し続ける人もいますが、それは相手にとってはストレスであり、折角一生懸命話しても雑音になり相手にはただただ苦痛の時間となってしまうのです。

会話は長ければそれだけしっかり伝わるわけではないですし、短すぎても何も得るものがなければ相手は満足せずに不満だけが残るのです。

相手と会話するというのはお互いが貴重な時間を割いていることになるのです。それゆえ、その時間が退屈なものになればもう会うのは控えようかなと思われてしまいます。いかに相手に気持ちよくなってもらい「また会いたい」「もっと話したかった」と感じてもらえるかなのです。

もしあなたが自分の会話を聞いたことがないのなら、近しい人との会話を許可をとって録音して実際に聞いてみてください。

私はクリニックでカウンセラーたちを指導していた時は私がお客さん役になり、録音してもらって自分の会話を何度も聞いてもらうようにしていました。人からアドバイスをもらうことも大切ですが、まずは自分で聞くのが一番上達が早いです。声の大きさやトーンも自分の体を通って自分で聞くのと人が聞くのとでは違って聞こえます。

自分では遅く話しているつもりでもとても早く聞こえたりするのです。また細かい説明が多すぎて結局何が言いたいのかわからなかったり、敬語を使いすぎて伝えたいところがどこなのか迷子になってしまう人も多いです。

噛んだり、言葉に詰まることを気にする人もいますが、人間ですから毎回同じように機械のように話す必要はありません。ですが仕事の場合はある程度口で覚えておく方がいざ緊張して頭が真っ白になってもすぐに言えるようになったりと良いことの方が多いです。ですのである程度口が覚えるまで練習することをオススメします。

あとこれは仕事の場合ですが、一番やってはいけないことだと思うのが、何度も「確認してきます」と言って席を離れることです。

あなたが新人であるのならある程度は仕方ないにしても席を離れた瞬間にお客様は一瞬にして気持ちが冷めてしまいます。一回くらいならまだしも何度も「聞いてきます」と連呼されては気持ちが引くどころかあなたへの信用も落ち、あなたが提供してくれるものまで信用しなくなります。飴ちゃんタイムどころかもう帰りたいとすら言い出すかもしれません。

かと言って知ったかぶりをしたり嘘をつくのは言語道断ですが、よく質問されることを同僚や先輩に事前に聞いたり、自分がお客様の立場になったときに「何が聞きたいか」「何を気にして何が心配か」を先回りして考えておくことは最低限必要なことです。それがあなたの自信になり信用にもなり、あなたは堂々と会話することができると思います。これは次回お伝えする「少しのユーモアを」にも関わることでもあります。

いかがでしたか?今日は実際に話す時のことについて詳しくお話をしました。

演じることは「人にしっかりとメッセージを伝えること」です。演技からこのように会話に活かせるポイントは沢山あり、宝塚という経験からこうして人とのコミュニケーション力をつけられた事はかけがえのない経験と学びだと思っています。

ですが私がお伝えしていることは演劇経験者ではなくても意識をすればみな簡単にできることです。今日お話ししたことを意識しながら、まずは自分の録音をとって聞いてみることをしてみてくださいね。

次回はこの続きである、話す時に気をつけてほしい「目から入る情報の部分」と3つ目のポイントの「少しのユーモアを」についてお伝えしたいと思います。

ボリュームたっぷりの内容になっていますが、この方法を身につけたあなたは会話に困ることはなく自ら楽しんで話すことができるようになると思います。

次回もお楽しみに。

風羽 玲亜

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